112人が本棚に入れています
本棚に追加
「御主人以上の実業家ですね」
春紀が褒めると
「主人が敷いてきた基盤が
あるから出来るのよ」
蓉子には奢りがない。
ないから、人が集まり、
知恵が生まれる。
「調布へ移ってからも
奥様の手伝いはしたいのです。
もちろん、家事を一番に」
志保の意向に
「君のしたいようにすれば
いいんだよ。暮らし良ければ
それで良いんだ」
自分で言っておいて
春紀は可笑しい気がした。
(“女は家”で夫に従う)
若い頃には、それに疑問はなかった。
紀州にいた頃と違う考えが
自発するのは、戦後の風か、
東京の風のせいかは判らぬが
春紀という名になった亮一には
心地悪いものではなかった。
最初のコメントを投稿しよう!