春を待つ日々

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土曜日は会社へ出て 一週間の書類を纏めて 正午前には退社するのが 一応の決まりである春紀の会社。 この日も例日通りの行動だったが、 例日でないのは午後の予定、 浅草で、志保と樹と 待ち合わせの約束をしていた。  「観音裏にいい洋食屋がある」 コックの佐渡から聞いていた店を 夕食にして、浅草寺界隈を散策予定。 「珈琲の美味い店はここだ。この前  茜が来たときに行ったんだ」 正がメモを寄越した。 「いい感じで新生活の  準備をしてるじゃないか」 ポソリという正に 「お前は…まだ…踏ん切りが  つかないのか…」 春紀は遠慮がちに聞いた。 「踏ん切り…踏ん切り…  そう言うのでもないような…  なんだか…怖いんだよ…  幸せなんて、パッと…  消えちゃいそうな気が」 そこで電話が鳴って話が切れた。
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