112人が本棚に入れています
本棚に追加
「あら?なんですやろ?
ありがとうございます。
かず子さん、風呂敷を」
「かしこまりました」
衣玖に頷いてから
かず子は風呂敷を解いて…
一瞬、指が止まった。
「どないかしたか?かず子さん?」
「いえ…いえ、お義母さん、
なにも…あまりに美しい
木箱なもんやから…」
即隆の顔をかず子は見たが
「美味いなあ、アメリカ菓子」
即隆は庭を向いたまま。
木箱から銘仙の反物を出して
衣玖に手渡した。
「あらあ、可愛いらしい柄」
「衣玖さん、それ、
足利銘仙言うて
関東の北の方の織物や」
「それがまたなんで大阪で?」
「義理でな、呉服屋もしてる
坊主仲間に買わされた。
わしの死んだ女房の方の身内やら
妹の孫にやら…何本かな…。
一本余ったからたま子に」
最もらしい言い訳を
即隆はさらりと言った。
最初のコメントを投稿しよう!