春を待つ日々

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「あら?なんですやろ?  ありがとうございます。  かず子さん、風呂敷を」 「かしこまりました」 衣玖に頷いてから かず子は風呂敷を解いて… 一瞬、指が止まった。 「どないかしたか?かず子さん?」 「いえ…いえ、お義母さん、  なにも…あまりに美しい  木箱なもんやから…」 即隆の顔をかず子は見たが 「美味いなあ、アメリカ菓子」 即隆は庭を向いたまま。 木箱から銘仙の反物を出して 衣玖に手渡した。 「あらあ、可愛いらしい柄」 「衣玖さん、それ、  足利銘仙言うて  関東の北の方の織物や」 「それがまたなんで大阪で?」 「義理でな、呉服屋もしてる  坊主仲間に買わされた。  わしの死んだ女房の方の身内やら  妹の孫にやら…何本かな…。  一本余ったからたま子に」 最もらしい言い訳を 即隆はさらりと言った。
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