春を待つ日々

25/33
前へ
/315ページ
次へ
即隆が帰ったあと… 自室へ戻ったかず子は もう一度…木箱を見た。 なんの変哲もない木箱… でも…押入れの奥から 別の反物が入った木箱を出した。 (そっくり…) その木箱には、昔、 亮一(春紀)がくれたまま 仕立てることなく仕舞ってあった 浴衣生地が入っていた。 結婚の約束をした日に 亮一が買ってくれたもの。 2dca3560-0693-4641-aaa6-cf272c5a8a7c (反物の木箱なんて  どれも同じなのに…) 自分がどうかしていると… かず子は思った。 けれども… 何の後ろめたさのせいなのか、 浴衣の木箱同様に 押入れの隅に片付けて、 亮二には銘仙の反物だけ…見せた。
/315ページ

最初のコメントを投稿しよう!

112人が本棚に入れています
本棚に追加