春を待つ日々

27/33
前へ
/315ページ
次へ
即隆和尚が留守の間、 寺の修築の段取りに 本堂を視ていたときだった。 何体かある仏像の箱が 「新しいか?」 疑問に思って手に取った。 「 ? ! 」 材と材との継ぎ目のクセに 見覚えがある。 「こりゃ…亮一の手やないか?!」 瞬時に言葉が出たけれど (わしは…何を戯けたこと…  出征前にでも亮一が…) 自嘲するも (出征前にしては  新しすぎやないか…) ……そんな堂々巡りの数日。 それらは、春紀(亮一)が 帰還した折の…隠れ暮らしの 慰めに作った数個だったのだ。 もし、ここで…かず子の隠した木箱を 亮輔が見ていたならば 必ず亮輔は気づいていただろうが…。  
/315ページ

最初のコメントを投稿しよう!

112人が本棚に入れています
本棚に追加