春を待つ日々

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芝山の事業は倉庫、不動産、 運送に商業と多方面に 勢力を拡大していた。 その下支えは夫人・蓉子の知恵、 そして、戦前から“危ない橋”も 渡ってきた古参の重役達、 そして、自らが手を差し伸べた 復員兵達に加え、戦中教育から 真逆の戦後へ投げ出されながらも 明るい未来を描こうという 若い世代にあった。  「政治家ってのは考えになかった」 そういう芝山だが 最近はよりいっそう 事業などを、蓉子や部下任せにして 有識者に知識を求めては 政治や暮らしの学問に 時間を割いていたから  「今からでも大学へ行きたい奴は   どんどん通え!」 社員達の学問費用も負担して  「生きるための力を   一つでも多く持つんだ」 皆に呼びかけていた。   
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