春を待つ日々

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一方、節約などとは程遠い 紀州では例年通りの豪華な正月。 二日から松の内までは 来客の切れ目がなかった。 すでに当主として 認知されている亮二夫婦で 段取り良く賄えると思った衣玖は 「あとは任せるから  ちょっとお寺さんまで  挨拶へ行ってくるわ。  折角戴いた大阪土産の着物も  おっさん(和尚様)にも  見て貰いたいし」 自ら仕立てた着物を たま子に着せて 夫・亮輔と寺へ出掛けた。 石段を登りきった辺りで 「ああ、おめでとうさん」 即隆が庭木手入れの最中。 7b278cdb-db7c-46c8-a2c3-f33e7dfb0434 「ほお…可愛いらしいなあ」 色白のたま子に良く映る配色を見て (やはり父親やなあ…  娘に合うものが解るんや…) 東京の空の下にいる春紀を 即隆は思い…胸が痛んだ。
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