春を待つ日々

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新年に貰った年玉で たま子は小さな小刀を買った。 昔トウチャが器用に 生活道具や飾りを 作っては祖母・衣玖を喜ばせた… と、話に聞いていたから。 今も祖父母の部屋にある 丸い菓子入れと 柿の実の柄の茶托を 二人が大切にしていることを 知っていたから…  (トウチャが極楽でも   楽しめますように…) 小刀に、年玉の殆どをはたいて 皆の目を盗んで 御堂へ供え、手を合わせていた。 たま子達が帰ったあと… 「必ず送っておくぞ」 即隆はたま子の気持ちとともに その小刀を胸に抱いた。  
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