山、半ば…

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山、半ば…

「今年も来年も注文が  殺到していますね」 山仕事の職人から そう言われて… 三月になった山の姿を 眺めて頷く笠岡亮二。 紀州の春は早い。 温暖で根元にしっかりと 養分を含んだ材木は 建築を急ぐ日本にとっては要、 「今年も手当ては弾める。  植え込みにも力を入れてくれ」 亮二が、皆の士気をあげたところへ 「繁盛してるなあ」 即隆和尚がやって来た。 「檀家周りの近道に  山を通らせてもらうで」 積まれた材木の横を 過ぎようとした即隆は、 「…【芝山建設】…」 荷札を手にした。 「飛ぶ鳥を落とす勢いの会社  ですねぇ、東京や名古屋、  大阪、兵庫の高級住宅用に  うちの材木を贔屓に」 笑いながら言う亮二に 「そりゃ、結構結構」 即隆は相槌しながら行った。  
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