山、半ば…

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寺へ戻った即隆は 机の引き出しから “ 芝山建設 資材部 第一課    係長   葛城 春紀 ” と、書いた名刺を出した。 (餅は餅屋であるからなあ、  どうしても関わる仕事になる) 昨日届いた春紀からの 手紙には  『 手作りの小箱や箪笥が    好評で、愉しんで    仕事に励んでいます 』 そう書いて… 見事な竹の彫り物をした文箱も 添えてくれていた。 (いずれは…名の昇る造り手に  なるだろう…。そのときか…  その前か…再会も考えて  ゆかねばならんが…) 今のかず子や亮二の暮らしを 即隆は心配してしまうのだ。 ただでも良心の呵責の中で 遠慮がちに幸福を抱く二人や 何も判らぬたま子の気持ち…。 春紀自身にしても (違う人生が幸せだとしても  再び会うことに、恩讐が  生まれることはないだろうか…) 杞憂が尽きない即隆。 (しかし………) 年々老いる春紀の両親の顔も 即隆を悩ませるのだった。
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