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一足先に、樹と大阪へついた正が
仕事でなく、個人的に頼りに
出来るのはやはり、天満屋で、茜。
「ようきてくれたなあ」
天満屋の女将をはじめ
「寄席やら川下りでも
楽しもうよ」
茜や晶子も歓待してくれて
少し年下の晶子の息子・将太も
樹の来阪を心待ちにしてくれていた。
ただ一人、茜の姉貴分・みどりは
正にはよい顔をしないけれど。
いつか…みどりが正を詰ったこと…
茜との付き合いを有耶無耶なままに
していることは、
(確かに俺が悪い…)
正自身、百も承知していたが
(……怖いんだ、幸せが…)
戦争が遺した不幸は
正を臆病にしたまま
時を刻んでいたのだった。
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