山、半ば…

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朝から樹は、天満屋の 開店準備や仕込みを 興味深く手伝っていた。 「よう(とても)気の利く子やね」 みどりが言うと 「苦労してきたんやろうなあ、  お母さんと二人、他人さんに  交じって暮らしてきて…  これからは葛城さんに甘えて  楽に暮らしてくれたら…」 女将は少し涙ぐんで樹を眺めた。 しばらくすると 店の表には、近所の子供が 集まり始めて 樹は将太に誘われ、皆に加わった。 「めずらしいなあ、松堂さんとこの  鈴子ちゃんも来てるわ」 茜が表を指すと 一際背の高い女の子・鈴子が 同年の女児より頭一つポンと、 飛び抜けているのが皆の目についた。 そして、子供達の話声が ボソボソ聞こえ…て、 まもなくのこと、    パシン!パシン! 頬を打つ音が二発、 店の中まで響いた。
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