山、半ば…

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「ケンカしてるの?!」 女将や晶子、みどりに茜、正が 表へ走り出ると 真っ赤に頬を染めた将太が グラグラと揺れ立つ前に 仁王立ちの鈴子、それから 二人を囲む子供達が 男女に分かれて対峙していた。 将太を睨む鈴子の様子から 頬を打ったのは鈴子で、 打たれたのが将太であることは 一目瞭然だった。 「ちょっとお!あやまりや!!」 厳しい声は女児連…。 怯むのは男児連…。 「あ、あの…どうかしましたか?」 路地から駆けてくるのは 女将よりやや若い感じの 上品な和服の女性。 「あれ?奥様もお越しやったんですか?」 女将が手招いて笑いかけた。 「鈴子が…何か…御無礼を…」 「何言うてんの、かあ様。  無礼は将太ちゃんや!」 「こ、これ!鈴子!!  すみません、すみません!  気の短い娘で…」 十の子の母にしては老いているが 下町に似合わぬ様子は 鈴子の横顔に瓜二つだった。
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