山、半ば…

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「はいはい!   それまでや!  今日は解散!  明日はいつも通り!」 女将の号令で子供達は それ以上の諍いをやめて帰宅、 将太はプイと何処かへ 行ってしまった。 「本当に申し訳ありませんでした」 母親二人は詫び合いながら 分かれゆき…皆は店へ戻った。 「…びっくりしたあ…  瞬きの間に右と左で  ビシビシって打つんだもの」 樹は鈴子の両手捌きを真似て まだ嘆息していた。 「そりゃ、父親譲りの  “二刀流”やもん!」 女将が笑うと 「ああ!あの雪の日の…  鈴子ちゃんのお父さん、  思い出すわあ」 晶子、みどり、茜が頷いた。 「お父さんって?」 「正さん、よく見かけるでしょ?  奥の膳で独りで呑んではる  エエ(良い)大島紬を着てる人」 「あの…箸より重いもの、  持てそうにないひと?」 「そう。松堂(しょうどう)先生」 「先生?」
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