山、半ば…

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「戦前は帝大で教授をしてらして  終戦前あたりからやなあ…  お国の仕事もしてらしたけど  …もうプッツリ何もかも辞めて…。  この周辺の土地はみな、  松堂さんの地所なんや。  大阪駅前のビルが事務所。  早いうちに生まれた御長男が  今はその仕事をされてるけど  たまに先生もこっちの家へ  来はるんよ」 女将の説明が、正の中では 合点がいく…。 (うん、いかにも隠居と言う様子) しかし、“二刀流”と風貌が 合点ならんので 「で、“雪の日”って?」 「私と晶子姉ちゃんが  陸軍さんにチョッカイされて」 「せや!あの連中、四人かがりで  晶子姉ちゃんと茜を無理に  連れ出して、悪いことをしようと」 みどりはその様子を 思い返して腹が立ったのか 指を鳴らした。 「そしたらいつもの席で  呑んでた松堂先生が  ウチの物干し竿を二つに折って」 「物干し竿?!」    
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