山、半ば…

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話題の人物・松堂芳嗣(しょうどうよしつぐ)の和泉の家には 意外な人物が訪れていた。 「あいにく家内が大阪の  倅の家に行ってるもので  ろくなおもてなしも  出来ませんが」 「いや、こちらが無理に  時間を作ってもろうたんや、  お気遣いなく」 と、言いながらソファに 掛けるのは和歌山県知事。 「お初にお目にかかります。  紀州かつらぎで材木を  生業の、笠岡亮輔と申します」 名刺を渡したのは 春紀(亮一)の父親だった。 「何もございませんが」 芳嗣の長女が、珈琲を用意して 応接室を去ると… 「笠岡さんには父の代から  世話になっていてね、  親しくさせて戴いてて…  先日も県関係の宴会で  御一緒して…つい…  戦時中なんぞの話に  なったところで…」  
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