山、半ば…

24/34
前へ
/315ページ
次へ
当の本人、春紀は 父親が自身の生死に 疑問を持ち始めたことも知らずに 志保との新婚旅行を終えて 東京の新居で、志保と樹の三人で 幸福な時間を過ごしていた。 大阪から戻った樹の “お気に入り”となった一つが “うどんすき”。 甘辛いが透明の出汁に 饂飩、椎茸、魚、肉、野菜と サッと煮込みながら鍋を囲む。  「辛い醤油味じゃ駄目だよ。   具材がみんな、醤油色に   なってはいけないんだ」 そもそも関西生まれの春紀には すぐに理解出来る味付けが 木曽育ちで東京暮らしの 志保にはやや困難らしく  「こんな感じじゃねぇのかな?」 独身寮のコック長・佐渡の 教えもあって、やっと 樹の望む味に仕上げるという 楽しい苦心…。 それから樹は  「剣道…習おうかなあ…」 何やら棒を両手に 振り回すのが、もう一つの お気に入りのようだった。     
/315ページ

最初のコメントを投稿しよう!

112人が本棚に入れています
本棚に追加