山、半ば…

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こうした蓉子の支えに、 少しでもなりたいと願う 志保等、女子寮の女達の努力が、 戦後という不安定を生き抜く上で 自分を形成する知恵を授け、 大きな自信すらも生んでいた。 戦火の中で、右往左往だった 自分に比べると、  (少しは、私も強くなった) 志保は最近そう思えることが とても嬉しかった。 春紀にただ養われるだけでなく、 家計を遣り繰り…あるときは 多少なりとも補填出来る能力が 自分にもあるということが、 生活のめりはりになる…。 もっとも…逆に… 長く封じ込まれていた “女の部屋”を…春紀に… 開け放たれてしまったことは 新たな心細さも生んでいた。 (この人なしではいられない) 春紀の胸の中で 歓びに咽ぶ蜜月の夜毎だった…。  
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