慕   情

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「今更…」 蓉子の顔に苛立ちが 露わになり出したとき、 「お呼びでしょうか」 客間に志保が現れ… 蓉子に手をこまねいてた近藤は、 さっと、相手を志保に替えた。 「はじめまして。  樹君をお迎えに上がりました近、」 「近藤さんだか、遠藤さんだか  知らないけど、勝手に  何を仰ってるの?!」 何事かも判らぬままに 怒る蓉子を前に志保は ただ、驚くばかりなので 「おいおい、蓉子、相変わらず  血の気の多い女だなあ。  兎に角、近藤君の話を  志保さんにした上で」 芝山は苦笑で間に割った。 「つい、私、思い出したのよ。  着の身着のままで空襲の中で  樹君を抱いて立ちすくんでいた  志保さんを…。そんな目に  合わせておいて、今更  引き取りたいなんて!!」 「 え?! 」 ここで初めて、志保は 眼の前の難儀の粗筋を知った。  
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