112人が本棚に入れています
本棚に追加
「今更…」
蓉子の顔に苛立ちが
露わになり出したとき、
「お呼びでしょうか」
客間に志保が現れ…
蓉子に手をこまねいてた近藤は、
さっと、相手を志保に替えた。
「はじめまして。
樹君をお迎えに上がりました近、」
「近藤さんだか、遠藤さんだか
知らないけど、勝手に
何を仰ってるの?!」
何事かも判らぬままに
怒る蓉子を前に志保は
ただ、驚くばかりなので
「おいおい、蓉子、相変わらず
血の気の多い女だなあ。
兎に角、近藤君の話を
志保さんにした上で」
芝山は苦笑で間に割った。
「つい、私、思い出したのよ。
着の身着のままで空襲の中で
樹君を抱いて立ちすくんでいた
志保さんを…。そんな目に
合わせておいて、今更
引き取りたいなんて!!」
「 え?! 」
ここで初めて、志保は
眼の前の難儀の粗筋を知った。
最初のコメントを投稿しよう!