慕   情

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「ドイツでね…」 松堂は少し間をおいて… 「“人を処分するだけの場所”を  たくさん見たよ…まるで  ゴミでも焼却するように  無意味に、残忍に…老若男女が  毎日大量に命を奪われた…。  そこには人生があったのにね、  彼等を待ってる人もいたのにね、  その人だけの人生でなく  待ってる人の先行きも  全てねじ伏せてしまった。  『終戦です、後は御自分で』  簡単に投げ出して生きろって  簡単に言ってくれる…。  世界中…不条理の砂利だらけ…。  君にはその後始末の片棒まで  担がせて、申し訳ないと」 「いえ!!先生、光栄です!  こういうことが無ければ  私なんぞ、ただの守銭奴で  人生を終えているのが関の山」 「そんなことはないさ」             
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