慕   情

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夏休みのせいだろう、 深大寺境内には お参りの年配者の間に ポツポツと子供達が 笑い声を立てて交じっていた。 巧い具合に駅前で 声をかけることが出来た樹も、 他の子等と元気に駆けて、 (ほんとにあの子に瓜二つ) 亡き息子の幼い日が 走馬灯のように敦子の脳裏を…。 眺めているだけでは 到底我慢はならず、 「この間は…道案内を  ありがとう」 樹のそばに寄ってしまっていた。 「こんにちは、おばあさん。  まだこちらにいらしたんですね」 きちんとした物言いに 素直な瞳が、敦子を釘付けに してしまうが 「お団子でもいかが?  みんなも一緒に」 気取られないように 他の子等も誘った。  
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