慕   情

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この様子を…、 宿屋が営む団子屋で 団子を振る舞われる樹等を、 見ていたのは 散策途中の正と茜。 「ああ。あのときの…」 「どうしたの?」 「駅前で鼻緒が切れたばーさんだ。  あれ?娘のトコヘきたとか  言ってなかったっけ?」   少し正は気になって 宿屋の主に 「あの上品なおばあさんは  長くいるの?」 と、尋ねた。 「ああ、木曽からいらした方だよ。  たいそうな厄払いをなさるようで  お寺様にも大金を寄付されたし、  ウチにも一月(ひとつき)分の  宿代を前金で戴いたよ」 「木曽…そりゃ遠くから…  ん?木曽?木曽…」 「どないしたん?」 「誰かの故郷かなあ…  なんだか聞き覚えが…」 引っかかりながら 社宅まで戻ると 志保が玄関前あたりで 水撒きをしていた。 「 ああっ?!! 」      
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