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「これ…母が『御茶菓子に』」
木村屋のアンパンを
盆に乗せ、百合香が
葛城の玄関を開けると
社長夫人の蓉子も同席で
さっきの近藤も苦い顔をしていた。
そこへ
「ただいま」
と、樹が帰ったものだから
「樹くん、お姉チャンの家で
晩御飯にしようよ。オムライスを
作ってあげる」
「旗も立てる?」
「もちろんよ」
百合香は巧く樹を連れ出した。
引き戸が静かに閉まって
緊迫した雰囲気が戻ったはずが…
「気の利く、素敵な娘さんですね」
近藤がポソリと言うものだから
「フフフ…近藤さん、
法律以上に女性を見る目も
おありじゃないの、フフフ」
蓉子が笑い、場が和んだ。
玄関の花一輪を
近藤は少し顔を赤らめて
しばらく見ていた…。
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