慕   情

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「こんばんは」 玄関に現れたのは正と茜。 「さっき、お祖母さんは  御自分の部屋へ帰られたよ」 蓉子の知恵で、二人は 深大寺の宿の、敦子の隣に 部屋を取り、敦子の様子を 見張りつつも…朝に夕にと 敦子に声をかけ、今夜も 三人で夕餉を囲んでいてくれた。 「皆さん…御心配下さって  交代で宿を、奥様の様子を」 遠慮がちに言う志保と、 春紀や正達を見て 「なんて…なんて処なんですか、  ここは…。ここの人は…」 近藤は感動のような、 呆れのような…不思議な感覚に。 「身を寄せて生きてきたの、私達。  いえ、あなたもそうでしょ?  近藤さん。竹内御夫婦と  身を寄せ合ってきたからこそ、  今のあなたがいる。  不思議な繋がりで人は  生きてゆくものなのね…」  
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