灯り燈せば…

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灯り燈せば…

笠岡亮輔は、即隆和尚からの 連絡を受け、逸る心持ちで 寺の階段を昇った。  『話がある』 即隆のその一言で 予感は的中と確信した。 (生きてる!生きてたんや!) 一段一段に力が入る亮輔を、 開け放された御堂の仏が 迎えてくれた。 仏の脇に即隆は座り、 小さな仏像を磨いていた。 そこには小箱、そして 「さすが…同じ仕事する親子や」 即隆は亮輔に言った。 仏像を仕舞う小箱の細工… あれは紛れもなく 亮一(春紀)の“手(細工)”。 「他の誰に解らいでも(理解できなくても)  父親の私はあ…私は…  解りますぅ……!」 仏の前にひれ伏して 亮輔は泣き崩れた。
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