灯り燈せば…

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気持ちを落ち着かせて 亮一(春紀)に会う算段をして… 夕暮れの帰路…亮輔は 自宅の門をくぐった。 子供達の笑い声… 弟二人を乗せたブランコを 揺らせて笑うたま子がいた。 「新しい楽譜が来たぞ」 反対側から亮二が現れて 「やったあ!今すぐ弾く!  早くピアノの部屋に行こ!」 たま子は亮二にせがんで 家の中へと入って行った。 ついボンヤリ立つ亮輔を 「どないや致しましたか?  お義父さん?」 背後からかず子が声をかけた。 「あ、いや、いや…  なんでもない…」 かず子を見ることなしに 亮輔は真っ直ぐに自室へ。 妻の衣玖が縫い物をしていた。 「お寺さんの用はなんでしたん?  御普請の話ですか?」 「ああ…いや…」 兎にも角にも妻には 話さねばならぬと 「あのな」の言葉と同時に 「また次が出来るみたい、ふふ」 衣玖の声が勝った。 「え?次?次て……?」 「孫!また来年には次の孫、  生まれますんやで!!」 華やぐ衣玖の笑顔に 亮輔は言葉を咽んでしまった。
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