112人が本棚に入れています
本棚に追加
「やはり…血が呼ぶのかしら…。
ごめんなさい暗い顔などして、
とても喜ばしいことなのに。
私、私って心が狭い…」
歯切れの悪さの理由は
春紀にはよく判っていた。
常に幸福の途中で
無残に摘み取られてきた
志保の野花のような暮らし。
春紀が故郷への恋慕に
今の生活を棄てやしないかと
不安が過る…
どんなに信頼していても。
だから…
「親父に会うだけさ、東京でね。
向こうには向こうの都合がある。
家族全員となんて、ハハハ」
春紀は戯けて笑った。
「だから、今日は下見!
この店どうかな?
親父が気にいってくれるかな?
当日は僕らと親父、四人で
ここで飯でも食おう」
「ええ!ええそうですね!」
志保も春紀に応えて
明るく笑った。
最初のコメントを投稿しよう!