灯り燈せば…

8/27
前へ
/315ページ
次へ
どちらも急いで駆け寄ると 感極まって言葉がない… あるのは人目憚らぬ滝の涙。 見つめ合って暫時… うわ言のような亮輔の声が 次第に鮮明になってきた。 「…りょうぉぉぉりょおおお…  ・・・・・・亮一ぃ!!」 「父さん!父さん父さん!!」 皮の厚い指太の父の手を、 大きく長い指で絡める息子の手。 シベリアからの凍てつきが ミシリと春紀の胸で溶ける音…。 (何を躊躇っていたのだ、俺は。  父の手はこんなに温かいのに) 「父さん…只今…帰りましたあ!」 今は亮一に戻った春紀… あらんばかりの力を込めて 老いた父親の上体を包んだ。
/315ページ

最初のコメントを投稿しよう!

112人が本棚に入れています
本棚に追加