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どちらも急いで駆け寄ると
感極まって言葉がない…
あるのは人目憚らぬ滝の涙。
見つめ合って暫時…
うわ言のような亮輔の声が
次第に鮮明になってきた。
「…りょうぉぉぉりょおおお…
・・・・・・亮一ぃ!!」
「父さん!父さん父さん!!」
皮の厚い指太の父の手を、
大きく長い指で絡める息子の手。
シベリアからの凍てつきが
ミシリと春紀の胸で溶ける音…。
(何を躊躇っていたのだ、俺は。
父の手はこんなに温かいのに)
「父さん…只今…帰りましたあ!」
今は亮一に戻った春紀…
あらんばかりの力を込めて
老いた父親の上体を包んだ。
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