灯り燈せば…

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他人から聞く話と 自分の目で確かめる話は 違うものではあるけれど、 即隆や松堂佳嗣からの話通りに 葛城春紀として亮一が、 鰥寡孤独(かんかこどく)の間で 壱から始めた人生が 今、順風に船出していたことを 何よりも先に、龍子に 亮輔は報告した。 「うんうん!それは何よりや!  今が幸せでないなら  アンタが気の毒やもん」 龍子は、姉弟であるから 亮輔が何もかもを、己のせいにして 亮一に詫びた弟の姿を、 誰よりも容易く想像出来るのだ。 「死んだままにしとくなんて  酷い仕打ちの父親に、  嫁も朝から晩までようよう(とても)  尽くしてくれて…」 二晩の食事の膳には 亮一(春紀)から聞いていたのだろう、 朝から干物に卵焼きと 亮輔のいつもの惣菜を手作り、 糊の効いた浴衣の用意。 亮一に対しても 普段から夫を敬うような言葉遣い…。 亮輔は、志保と言う嫁に 深く感銘し、そして 「なかなか息子も…  (いつき)いうんやけど  躾の行き届いた賢い子なんや」
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