灯り燈せば…

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東京では… 「大丈夫かい?」 志保の枕を氷枕に替えて 春紀が尋ねた。 「なんでもないのよ、ふふ  お義父さまに良いところを  見せようと張り切り過ぎたのね」 志保が軽い熱で床にいた。 「隣のおばさんが林檎を  剥いてくれたよ」 樹も心配して布団の脇に座った。 心細気に居る二人を 志保は笑った。 「心配しないで、大丈夫!  ホッとして、気が抜けただけ、  お義父様に安心して戴けて…」 帰りがけ…亮輔は 誰にも見えぬところで 志保のエプロンのポケットに 「内緒や、内緒!化粧品でも  買うたらエエ!」 封筒を押し込んで 「頼む!頼むで!仲良う頼む!」 何度も呟いて両手を合わせた。 お金が嬉しいわけではない。 目上であるにも関わらず 拝むように、自分を見てくれたことに、 志保は感動と  (認めて戴けた) その思いに安堵を抱いていたのだ。
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