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秋も深まったある日、
名古屋の妹夫婦の家を辞した
衣玖は、夫・亮輔の持つ切符が
“浜松”行でなく、
“東京”行…
であることに気づいた。
亮輔が急に言い出した浜松行きは
てっきり義姉・龍子の身体でも
調子が悪いのかと思っていたが、
「急ぐ旅でもないんや…」
そう言ってくれる亮輔に
「なら、名古屋の妹の家へも
寄れますか?」
と、名古屋にも二泊を頼んだ。
こんなことでもない限り
遠くの身内に会うことなどは
出来ない田舎暮らし。
旅気分でいたけれど
やはり夫の様子は何か
良いようなものでもない上に
切符は“東京”の文字。
「あなた…これはいったい…」
訝しんで顔を覗いた向かい席。
発車の汽笛がなると同時に
「赦してくれ…っ!」
亮輔は唸るように言った。
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