灯り燈せば…

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そのあと… 夫の語った話が… 夢か現か判らぬうちに 特急は…衣玖を 東京駅まで運んでいた。 「だい…じょうぶ…か?」 「え…?」 「いや…ぼんやりしてるから…」 「頭の中で…言われたことが  上手く……纏まらんのです」 あれほど望んでいた息子の生還が 数年前に現実に起こっていたとは…。 そして (黙って…黙ってこんな遠くへ  こんなとこへやってしもうた  私は…なんという愚かな母親なんや!) 自虐の念が湧きはじめ… 恐ろしい気にさえなって 震える衣玖の前に 「こんにちは。あ、お父さん、  お久しぶりです。お迎えに  上がりました」 伊波正と茜が、 迎えに現れた。 「春さん、現場からまだ  戻れんので僕らが  迎えにきました」 「お疲れやったでしょ?  荷物を持ちますね」 自分の知らぬ息子の友人の親切と 向き合うべき現実のために 衣玖は車に乗り込んだ。    
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