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時は流れて…
穏やかな朝になった
昭和三十年の正月を、
調布の家で、
妻・志保と長男・樹、そして
昨年生まれた娘・紀子と、
葛城春紀は迎えていた。
「あけましておめでとう」
「おめでとうございます」
朝からの芝山屋敷での
社員総出の年賀会のあと、
昼餉になった家族の祝い膳、
健康な子供達の顔と、
二児の母となっても
なお美しい妻の顔が、
何よりの馳走になる春紀にとって、
帰還以来最も晴れがましい
正月を迎えていた。
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