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ただし、そこには樹の思慮がある。
(子供なりに、いや大人以上に
自分の立ち位置を考えて振る舞う
樹であるから、愛情は一番に
注がねばならない)
春紀は樹の剣道場へ仕事帰りは
顔を見せたり、休日は
二人で釣りへ出掛けたりと
“息子”を慈しんだ。
……とは言え…
(きっと亮二(弟)も同じ気持ちで
たま子に愛情を注いでくれている)
そんな気持ちも無くはなかったが。
そして……
それは一分の狂いもなく
たま子の暮らしを物語っていた。
実子の息子二人に
「お姉ちゃん(たま子)だけ
いつも贔屓されてる」
そんな文句を言われても
亮二は兄(春紀)の“遺児”を、
春紀が毎日瞼に描く
緑豊かな紀伊山中で、
相変わらず大切に守っていたのだ。
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