時は流れて…

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「おじいちゃん、おばあちゃん  “長野”の方からまた   手紙が来たよ」 たま子が亮輔・衣玖の部屋に 郵便物を持ってきたのは 七草の夜だった。 「ありがとう。  菓子でも食べる?」 「ううん、宿題せんと。  今日は冷えるから  風邪ひかないようにね、  おばあちゃん」 たま子が廊下を去るのを見送ると 衣玖は障子をしっかり閉じて 炬燵にいる亮輔と 郵便物の封を切った。 手紙の差出人・“長野の方”は 竹内敦子、樹の祖母である。 昨年東京で、紀子が生まれた際、 初めて顔を合わせた敦子は、 志保の実母のように付き添っていた。 なんとか理由をつけて 駆けつけた出産の時から 敦子は志保に代わり 亮輔衣玖夫婦に孫娘の様子を こうして知らせてくれるのだ。
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