時は流れて…

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「よぉ!最中買ってきたぞ、  神保町の。お前、好きだろ?」 正が奥へ入っていくと 幼児を抱いた男・坂田は 「いつも申し訳ない…」 力なく笑った。 「どうだい?具合は?」 「…ああ…まあ…まあ…な…」 坂田は右腕を撫でた。 その右腕はただ付いているだけと いった感じで動かない。 春紀と正と同じ収容所で 過ごしたシベリアは “寒い”…そんな言葉では 到底追いつかない処、 重労働と凍傷に 理髪師の利き手は死んだ。 「見たまんまの  “髪結い亭主”に  なっちまった…  働きもないくせに  ガキなんか作ってさぁ」 自嘲的な笑みすら痛々しい。    ♧ スピンオフ作品   『君のゆりかご』にて https://estar.jp/novels/25587113?utm_source=twitter&utm_medium=social&utm_campaign=viewer    この夫婦の話を書かせて    頂いております!ヨロピク!    
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