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そのまま秩父にある自社の
セメント工場へ行くという芝山を
都合よい駅で降ろして
春紀と正は帰路についた。
なんとなく言葉少ない車内…、
互いの過去へと
頭の中が還っているから。
正は茜と結婚して
恙無い、幸福な日々を
過ごしていたけれど
“ピカドン”と人々がいう
戦中最大の攻撃で亡くした
家族への思いは…
語るに語れぬものがあった。
春紀にしても
ようやく辿り着いた我が家に
己れの椅子がなかった残酷は
幸福を得た今も
胸の片隅で疼く…。
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