時は流れて…

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春紀が無くした我が家の 娘・たま子は今日も 父のための供え物を 探して街歩きをしていた。 ピアノ発表会が間近のため 少し回数の増えたレッスン。 「たまちゃんは増やせば  増やすほど上達するけど  私はアカンわ、もう  指が痛くてイライラする」 和歌山市内の“ぶらくり丁”を 教室仲間の松堂鈴子と歩いていた。 祖父が仕事で知り合ったという 和泉の松堂氏は 仕事のみならず 家族のことまで気にかけてくれ、 たま子のピアノが上手いと聞くと、 簡単には入れない弾き手の教授も 紹介してくれた。 松堂氏の娘、鈴子がすでに門下生。 同い年で、性格こそ たま子とは真逆であるが、 如何にも“戦後女子”の 言いたいことはハッキリと、 したいことは真っ先にと、  (私にはないなあ) ……そんな活発さに惹かれて レッスン以外も行動を ともにしていたのだった。
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