時は流れて…

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“調香師”と言う職を たま子が知ったのは 母親が愛読していた月刊誌。 料理や刺繍、流行りの歌など、 主婦の好みそうな記事を 美しい挿し絵を添えて書いた本だ。  【 花や樹木の香りを 魔術師のように操り    香水や化粧品香料を    作り出す仕事 】 (そんな仕事があるなんて…) 田舎で世間を知らないたま子が、 初めて意識した社会のごく一部。 (私の“鼻”が職になるなら素敵) 子供の頃から嗅覚に優れ  「材木の種類も鼻で判るとは   さすが惣領娘や!」 父・亮二も感心するほど。 どうしたら調香師になれるか、 中学の先生に尋ねて  「まずは農学部で勉強してから   自然科学、生物学も習得して   どこかの会社に就職だな」 ……と、教えてもらった。 でも、  「女子校を出たら   家の手伝いをして   早々に婿を入れんとならん」 亮二の希望とは異なるから 家族には進路相談が 出来ずのたま子であった。   
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