時代の春

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時代の春

 『 もはや戦後ではない 』 のちにこの言葉を産む 昭和三十年は、政治は当然ながら 人の暮らしも進化と繁栄の兆しが、 日本のあちこちに見られた。 珍しかった自動車や オートバイが田舎でも よく見かけるようになり、 家事を楽をしてくれる家電も 日々進化をとげて やがてくる高度経済成長への 道筋をつける年であった。 「今日も八時だぜ…」 嘆息の伊波正に 「ああ…」 と、春紀は頷くと、 電車から降りる同じような 勤め人の背中を眺めた。 「国の発展の陰に疲労ありか」
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