時代の春

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「いってらっしゃい!」 乳飲み子を抱く志保に 送られて駅へ向かう春紀と樹。 「おはよう。今日も残業だな」 後ろに追いつく正。 駅前の自転車屋を通過して 「おはよう!気をつけて」 加藤夫婦に手を振られ、 樹はここで駅北の中学校へ。 「今日も混んでるぞ」 苦笑しながら正と乗り込む電車、 同じような勤め人が犇めく。 「夏になったら…  茜と広島へ墓参りに  行こうかと思ってんだ」 正がポツリと言った。 「そうか…」 相槌しながら (白いシャツを着て…  "東京人"なんて顔してる  乗客の多くが、正のような過去を  胸に抱いて生きているのかも)  そんなことをついと思う通勤…。 都心に向かう駅毎に 近代的な建物になる車窓なのに、 田園しかない紀州の景色が 浮かぶ春紀。     同じ時刻……、
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