時代の春

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その田園しかない道を 娘のたま子は、 朗らかに歩いていた。 いつもは友達と待ち合わせの 地蔵堂まで、母・かず子が 送るのであるが、 「新しいカメラを買ったから、  写しがてら送るわ」 祖父の亮輔が一緒に。 「たま子は別嬪だから  カメラも喜んどる」 「おじいちゃん、人に聞かれたら  笑われるよ、フフ」   そんな笑窪もちゃんと カメラに納める亮輔。 写真が出来たら 東京へ持っていくつもりでいた。 東京の孫の顔を 見たくて見たくて堪らない 衣玖の要望に、  「一緒にいきましょうよ。   亮二達には"東京見物"   とでも言い訳して」 策を練ってくれたのは 浜松の龍子だった。
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