時代の春

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  「父さんも母さんも  楽隠居してエエ歳や。  どこでも好きに   出掛けたらエエわ」 「帰りは伯母様と伊東の  温泉にでも寄られたら…」 事情を知らぬ亮二夫婦が 快く出してくれるのには 些かの後ろめたさもあるが、 衣玖同様に亮輔も 弾む心は抑え難かった。 「干椎茸と梅干しは  龍子姉さんのとこへ  送りましたからまた  浜松で東京の分も  分けるとして…  子供の物も買いたいけど」 衣玖はいそいそと 旅行の支度を励みながら 「お金…いつか山を売って  亮一(春紀)がもしや生存に  備えていたお金…今…  渡すときでは…」 そんな心配もしていた。 けれども父・亮輔の考えは 妻とは異なっていた。
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