時代の春

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多額の金が動くと “隠し事”が露呈する心配もある。 好機が来るまではこのままで、 どの家庭にもやってくる歪みは 最小限にしたいと言う考えだ。 それに… 「文字通り“裸一貫”できた男や…  今、水を挿すような金の使い方より  もっと先に、有効に使える…  そんな手立てがエエやろ」 死んだ息子との再会から 冷静を取り戻しつつあった亮輔は、 東京での春紀の仕事ぶりを 他人から聞くたびに 男として称賛せずには おれなかったのも事実。 (子供の時からガキ大将で  場を作るのが上手かった) 幼い日の春紀を思い出していた。 それは、弟・亮二とかず子の 間に生まれた長子・亮真と重なる。 小学校へあがったばかりだが 明朗快活にして山野を駆ける 健康な身体は姿形も 春紀瓜二つであった。 (不思議な(えにし)やなあ)      
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