時代の春

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その不思議を… 亮真の実父・亮二こそ 強く感じていた。 子供の頃から風邪一つ ひいたことがない亮真の、 同年の子よりひと回り大きい その身体つきは兄そのものだった。 (おそらくは立派な惣領になる) それは予感出来た。 両親もそれを望んでいることにも ……わかっていた。 (この子に兄が宿るなら  それも良いではないか…) 自分でもそう思うのだが、 唯一血の繋がるたま子を 他家へ嫁がせるのは どうにも気のひける亮二なのだ。 (俺は兄貴の死を  “喜んで”しまった人間) 愛のために自ら堕ちた “人でなし”の道を 亮二が悩まぬ日は なかったのである。
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