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「ビクビクしながら
一週間…一月、一年経っても
亮一は帰らんかった…。
ああ、手紙を届けんで(届けずに)
良かったと…思う半面…
もし…もし…何処かで
生きてるなら…
独りなんやろうか…
かつらぎ(故郷)の様子を
知ってるんやろか…
あれは病気でもして
助けを呼ぶ手紙やったのか…
いろいろ考えてしもうて…」
眼だけがギョロリとなった
水上の目の縁には涙の溜まり。
最早余命のないこの郵便局長の
心のシコリを取れるのは
即隆独りであった。
「それは届けてくれんで
良かったんや…亮一は
東京で幸せに暮らしてる」
即隆は水上の手を強く握った。
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