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(手紙がもしも届いていたら?
“葛城春紀”という人間は
生まれなかったであろうか…)
水上と別れてから
寺に戻るまで…
ずっと考えていた即隆。
帰りがけの本屋で買った
建築雑誌にはまたしても
春紀の記事が載っていた。
『 木材を知り尽くした男 』
と称される欄間には
荒振る龍が一匹。
(天賦の才の為せるのか…
心の闇を潜った者の為せるのか)
今はただ、この二つを生きる
春紀を見守るだけの即隆であった。
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