変わりゆく雲

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昭和も三十三年の夏を迎え、 芝山屋敷も顔ぶれが またいっそう賑やかに…。 修三郎には三人目の息子が、 社員同士で世帯を持った者が、 新たに社宅の住人となり、 社宅も子供の数が倍に。 幸福の声が響く我が家が、 修三郎の明日の活力だった。 「今朝、伊波さんのお宅、  女の子が生まれましたのよ」 「そりゃよかった」 「私もさっき、お見舞いに  伺いましたの、母子ともに  健康でよかった…ほんとに」 ヒロシマの惨禍に 家族を亡くした伊波正の 女児誕生の知らせに 庭先はなお華やいで見えた。
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