無患子の袂で

変わりゆく雲

その正は、病院の帰り、

「祝い酒！奢らせてくれよ」

と、春紀を誘って新宿にいた。

夏の夜空にキラキラと

ネオンが瞬く新宿は、

寄席帰りの老人達や

ダンスホールへ向かう

若者たちが闊歩。

二人は馴染みの食堂へ…。

「深酒は駄目だぜ」
「解ってるよ、春さん、
　早く家に帰りたいんだろ？」
「まあな」

春紀が帰りたい理由は

今年誕生した次女・和歌の存在。