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高い空を鳶がゆく…
石段を登りきった本堂前で
亮二は腰を下ろした。
「木の生え具合を見てくるよ」
そう言って家を出たが
本当は独りになりたかった。
少し、気にかかることを
…聞いたのだ。
『驚いたわ、東京で
ここの戦死した長男さんと
そっくりな人を見たんや。
洒落た紳士って感じで
ここらの山男には
程遠いけど…横顔が…
そりゃもう“生き写し”』
世の中には三人くらいな
似た姿形の人間がいる
…というくらいだから
(単なる偶然だ)
言い聞かせる自分と
(戦死と言っても
遺体を返してもらった
わけではない)
…怯える自分。
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